当ジムの女性最高齢のYさんに、珍しい物を見せて戴いた。
柳原白蓮の羽織をほどいてこしらえた洋服だ。
Yさんはもうすぐ75歳になる。短歌を始めて40年余り。35年前に短歌の先生から譲り受けたそうだ。
その先生は50年ぐらい前、赤銅御殿の歌会の席で白蓮が着ていた羽織をさっと肩に掛けてもらったそうで、それをその後先生が洋服にして着ていた物とのこと。
もし羽織のままなら「なんでも鑑定団」でいくらの値が付くのだろう、などと下世話な事を考えながら風呂敷づつみをほどく。
黒地に金糸を格子柄に織り込んだ、紗と言うのだろうか、そのうすものの絹織物は決して華美ではないが、角度によっては光をはらみ美しく輝く。おそらく100年はたっている布だ。
Yさんは今でも年に2~3度はこの服を来て出かける。大事に手洗いして風を通す。襟首のところが多少擦れている以外、どこも痛んでいない。
これを見て、Yさんが6年前の歌会始めに入選して皇居に行ったのも、単なる幸運や偶然ではなかったのだと理解した。Yさんは今は無き二人の歌人の魂を受け継いでいたのだ。
さて、Yさんは、トレーニング歴17年目になる。入会前は運動とはまったく縁の無い、太った女性だった。真面目に週2~3回のトレーニングを続け、15kg体重を落とし、今でも若い女性と変わらない重さのバーベルでスクワットやベンチプレス、デッドリフト等をこなす。
古布も筋肉も使わなければ駄目になる。しかし大事に使ってアフターケアをすれば、100年たっても使っていけるに違いない。